法定相続人が請求できる遺留分侵害額請求とは?旧法との違いや請求方法を解説
- この記事のハイライト
- ●遺留分侵害額請求とは法定相続人(兄弟姉妹以外)に認められている最低限の取り分である遺留分が侵害された際に請求できる権利のこと
- ●遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求では清算方法や支払い猶予、生前贈与の時期などに違いがある
- ●遺留分侵害額請求をおこなうにはまずは相続人と話し合いをおこない合意が得られない場合は調停・訴訟へと進む
不公平な遺言内容や生前贈与がおこなわれていた場合、法定相続人には最低限の遺産を求めることが認められています。
これは「遺留分侵害額請求」と呼ばれ、遺留分を侵害した方に対して、最低限の取り分を請求することが可能です。
そこで、遺留分侵害額請求とはなにか、請求方法や遺留分滅殺請求との違いについて解説します。
伊勢原市、平塚市、厚木市、秦野市を中心に神奈川県内全域及び東京都内で、遺留分侵害額請求をするかご検討中の方は、ぜひ参考になさってください。
遺留分侵害額請求とは?請求できる相続人について
相続によっては法定相続人に不利な内容の遺言書が作成されているケースがあります。
そのような場合、法定相続人であるにもかかわらず、全く遺産が受け取れない可能性も生じます。
そこで、知っておきたいのが「遺留分侵害額請求」です。
ここでは、遺留分侵害請求とはなにか、またそれを請求できる相続人について解説します。
遺留分侵害額請求とは
法定相続人には、被相続人(亡くなった方)が遺した遺産を最低限取得できる「遺留分」が認められています。
しかし、遺言の内容によっては、法定相続人であっても遺産を全く受け取れないようなケースがあります。
このような場合、遺留分を侵害されたとして、侵害した方に清算金を請求することが可能です。
これは「遺留分侵害額請求」と呼びます。
たとえば、法定相続人が長男・長女・次男の3人いると仮定しましょう。
遺言書には、「長男に全財産を譲る」と記載があるとします。
この場合は、長男はすべて遺産を相続することになり、長女と次男は一切受け取ることができません。
しかし、長女と次男には遺留分が認められているため、長男に対して金銭を請求することができます。
遺留分を請求できる法定相続人とは?
実は、法定相続人であっても、遺留分を請求できる方とできない方がいます。
遺留分を請求できるのは、「配偶者」「子ども・孫・ひ孫などの直系卑属」「親・祖父母・曾祖父母などの直系尊属」のみです。
つまり、兄弟姉妹や姪・甥は法定相続人であっても、遺留分を請求することはできません。
また、相続放棄した方も同様に遺留分は認められていません。
相続放棄すると、初めから相続人ではなかったと見なされるためです。
このように、法定相続人であっても、請求可能な方とできない方がいる点に注意しましょう。
相続における遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求の違い
2019年の民法改正により、遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求へ名称および内容が改正されました。
ここでは、改正前と改正後でどのような違いがあるのか解説します。
おもな違いは、以下の4つが挙げられます。
- ●精算方法
- ●適用時期
- ●支払い猶予
- ●生前贈与の時期
それぞれの違いについて見ていきましょう。
違い①精算方法
1つ目の違いは、清算方法の違いです。
改正前の遺留分減殺請求では、原則として現物で清算しなければなりませんでした。
しかし、改正後の遺留分侵害額請求では、現金のみの清算に変更されています。
従来の現物精算とは、現金や不動産、株式など遺産をそのままの状態で返還することになっていたため、不動産など分割しにくいものは「共有状態」になっていました。
しかし、共有状態は、トラブルを招きやすいため、現行では現金のみの清算が原則とされたのです。
違い②適用時期
2つ目の違いは、適用時期です。
現行の遺留分侵害額請求が適用される時期は、2019年7月1日以降の相続についてです。
それ以前は、旧法の遺留分減殺請求が適用されます。
違い③支払い猶予
3つ目の違いは、支払い猶予です。
改正前は、支払い猶予は設けられておらず、請求されれば即時に返還する必要がありました。
しかし、現行は、支払い猶予が設けられました。
これは、遺留分侵害額請求では、前述したように現金のみでの清算に変更されたためです。
現金がすぐには準備できるとは限らないため、支払い猶予が可能となりました。
現金がすぐに用意できない場合は、全部もしくは一部の支払い期限の猶予を裁判所に求めることができます。
違い④生前贈与の時期
4つ目の違いは、生前贈与の時期です。
改正前の遺留分減殺請求では、生前贈与の期間は定められておらず、すべてが対象となっていました。
しかし、改正後の遺留分侵害額請求では、生前贈与は亡くなる前の10年間と定められました。
これは、20年や40年以上の古い生前贈与が持ち出され、遺留分を計算する際に大きなトラブルになる傾向があったためです。
このようなトラブルを回避するために、死亡前の10年間と限定されました。
法定相続人が遺留分侵害額請求をおこなう方法
では、実際に法定相続人が遺留分侵害額請求をおこなう場合は、どのようにして進めたら良いのでしょうか。
遺留分侵害額請求をおこなう際は、原則として以下の流れで進めるのが一般的です。
- ●相続人で話し合う
- ●内容証明郵便で請求する
- ●調停に申し立てをする
- ●訴訟を提起する
それぞれの方法を見ていきましょう。
①相続人で話し合う
遺留分を侵害されたとして、相続人に請求したい場合は、まずは話し合いの場を持つことが大切です。
話し合いにより合意が得られれば、合意書を作成し、支払いを受けることになります。
この方法は、もっとも円満な解決が期待できる方法といえるでしょう。
ただし、スムーズに交渉を進めるためにも、客観的な視点から判断できる弁護士をくわえて話し合いをおこなうことをおすすめします。
②内容証明郵便で請求する
相続人との話し合いの場で合意が得られない場合は、内容証明郵便を利用し請求書を送りましょう。
なお、遺留分侵害額請求は、相続開始から1年以内と期限が決められています。
話し合いの途中でも期限が迫っている場合は、内容証明郵便で通知しておくと時効を止めることができます。
請求書を送付したら相続人と話し合い、清算方法を取り決め、支払いを受ける形です。
③調停に申し立てをする
遺留分に関する話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に家事調停を申し立てることになります。
調停では、調停委員が双方の主張を聴きながら交渉していきます。
直接本人同士で話し合うよりも、裁判所が仲介することで当事者が歩み寄りやすく早期解決が期待できるでしょう。
調停案に双方が合意すれば、調停成立となり支払いを受けることになります。
④訴訟を提起する
調停でも話し合いがまとまらない場合は、訴訟を提起するしかありません。
訴訟では、遺留分侵害の事実を証拠として立証しなければなりません。
どのような証拠が必要なのかは、弁護士と相談して進めることをおすすめします。
遺留分の主張および証明ができれば、裁判所が相手に遺留分侵害額の支払い命令を下します。
相手が支払いを拒否した場合は、財産の差し押さえも可能です。
まとめ
遺留分侵害額請求は、兄弟姉妹以外の法定相続人が遺留分を侵害された際に請求できる権利のことです。
請求する場合は、原則として相続人と話し合い、合意が得られれば支払いを受けることになります。
しかし、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停もしくは訴訟を利用して解決を目指すことになるでしょう。
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